(3)意思決定の本質
意思決定とは何を決定しているのであろうか。その本質は何なのであろうか。当方法論流の解釈を以下に記述する。
1)意思決定の本質(その1)採否の選択
(02.12作成)
意思決定の入り口は、ある案件に対してYes、Noを判定することである。「するか、しないか」「進むか、留まるか」「撤退するか、継続するか」などの意思決定である。登山の例でいえば、「山に登るか、登らないか」である。
これが最も基本的な意思決定で、意思決定というとこれだという風に思う方もいるぐらいである。従来型の経営だと、上位の意思決定者は部下の上申に対し、専らこの意思決定をしていたようである。過去の延長で経営ができたときは、それで済んだといえる。
現在の状況でも、これが最も基本的な意思決定であることには変わりがない。
この意思決定はYesの場合に得られる価値目標・失う価値目標と、Noの場合に失う価値目標・得られる価値目標を対比させて判断することになる。
保守派は失う価値を重視し、進歩派は得られる価値を重視する。
2)意思決定の本質(その2)目的・ねらいの選択
(96.12作成)
まず意思決定は何らかの案件に対して答えを出すことである。当方法論では意思決定条件を5W2Hでとらえることにしている。すなわち、
いつ(When)
どこで(Where)
だれが(Who)
何を(What)
なぜ(Why)
どうやって(How)
それをいくらかけて(How Much)
実現するのかを決定することである。この中で最も重要なのはいうまでもなく目的・ねらい(Why)である。
MIND−SAでは「目的・ねらいを価値目標でとらえなければならない」としている。
であれば、意思決定の本質は案件に対する価値目標を選択することである。
納期短縮を重視するのか(T)
コストダウン 〃 (C)
品質向上 〃 (Q)
処理量増大 〃 (V)
注:T、C、Q、Vは目的・ねらい項目(MRC、VQTHSFU)を指す。
MRC、VQTHSFUの内容については目的達成手法解説「
OB
目的・ねらいの設定手法」参照。
この選択は分かれ道でどちらに進むかの進路選択に相当する。
職業選択の際の判断、配偶者選択の際の判断などは、MRC、VQTHSFU項目の選択判断(何を重視するか)である。
職業選択の場合
収入(V)を重視するか
生きがい(H) 〃
仕事の内容(Q) 〃 など
配偶者選択の場合
収入(V)を重視するか
相性(H) 〃
能力(Q) 〃
見映え(Q?) 〃 など
この選択は択一でなく複合もあり得る(TとC、TとCとQなど)。しかし、複合するほど達成は困難となる。配偶者選択をしない人はその複合要求条件の達成が困難なのであろう。
3)意思決定の本質(その3)取り組み強度の選択
(93.12 95.12 96.12改訂)
ビジネスは、ある目的に対して資源(人・物・金)を割り当て、投入し、ある成果を得ようとするものである。一般的にその目的は、階層化されてブレークダウンされ、各階層の責任・権限者に割り振られる。各階層の責任・権限者は、自分に与えられた資源をどう配分すれば、自分に与えられた目的をより良く達成できるかを意思決定している。
当方法論が対象としている各種プロジェクトや案件も、その意思決定の対象の一つである。
同一資源で期待成果大と小の案があれば、だれしも期待成果大を選ぶ。同一期待成果に対し、投入資源大と小の案があれば、だれしも投入資源小を選ぶ。これらのケースは、本格的な意思決定問題とはなり得ない。
また、なるべく期待成果と投入資源の比が大きな案を選択しようと検討する。これは(広い意味での技術的)検討問題であり、意思決定問題ではない。
決定ないし決定のための検討を要するのは、投入資源小で成果小を選ぶか、投入資源大で成果大を選ぶべきかのケースである。このバランスをどこでとるかが意思決定問題の3番めの本質である。例えば、投入資源を小にして期待成果小で我慢するか、期待成果大を期待して大きな資源投入を行うか、どちらを選ぶのか、である。この選択は無限の可能性がある。
選択した道をどのくらいのスピードで、どこまで行くのかの選択といってもよい。
意思決定の本質(その2)と(その3)は、必ずしも(その2)を先に決定してから(その3)を決めるとはかぎらない。(その3)で本件は目的・ねらいが何であれそれほど重視できない、あるいは大いに重視するという判断が先にあって、そのうえで(その2)の選択を行うということもあり得るのである。すなわち、次のように相互関係にある。
意思決定の本質(その1)と(その2)の関係についても同様のことが言える。
4)「判断」により行われる意思決定
ビジネス上の意思決定は、(その1)から(その3)まで真理により決まるものではない。また、原理や最適により決まるものでもない。
ビジネス問題の解に真理はない、正解もないのである。
原理だけで決定できる問題もほとんどなかろう。
最適は、前提条件が明確に設定できるときに求め得るものである。ビジネス問題では、前提条件を明確に設定できることはまずない。明確に設定したとしても、意思決定の対象案件が実現したときに、その前提条件が成立している保証はない。下手をすれば「最適」が「最悪」の意思決定になっている可能性さえある。
「これがよかろう」という判断によってYes、No、目的の選択や価値目標、成果と投入資源のバランスを決定するのである。この判断はだれが行うかにより、その立場・経験・価値観で異なった答えとなるのが自然である。「人により異なる」のである。
したがって、だれの判断によるかということになるが、当然ながらその責任・権限を持った者である。関係者は、その責任・権限者が関係者にとって好ましいと考えられる方向に意思決定を行うよう、責任・権限者に対し必要な(有効な)情報を提供したり働きかけをしたりすることになる。
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当方法論の概要
2.当方法論の手順の特徴
(1)合理的・合目的的な手順構成