1.方法論とは
方法論は、英語ではMethodologyという。

20年ぐらい前に、PRIDEという米国産の「システム開発メソドロジ」の日本での普及活動をしていたころのことである。当時日本一のソフトウエア・パッケージ販売会社になっていた潟Aシストのビル・トッテン社長にこう言われた。トッテン社長は、現在は潟Aシストの会長だが、「親日家」というより、日本人以上の日本愛国主義者として著名な方である。そのトッテン社長が言われたのは、「あなたがたはメソドロジをやっているのか? MethodologyというのはMethod学ですよ。学問をやっているのですか?」である。

我々は、Methodは手法で軽っぽい、Methodologyは方法論でレベルが上、あるいはより体系化・総合化されたもの、という印象でMethodologyということばを使っていた。したがってトッテン社長のご意見は、当座はピンと来なかった。「何のことを言っておられるのだろう」としか思わなかった。辞書を調べてみると「方法学」とかが最初に出ている。Logyは「学」を示すので、そういうことかもしれない。「ふーん、そうか。」と思ったが、それで終わりだった。

しかし、何となく気になって、トッテン社長のことばを思い出していた。そのうち段々その感じがつかめてきた。そこで1984年に当方法論を初公開したとき、当方法論は、Methodology、方法論といわず、Method(手法体系)と称した。 現在は、体系的なMethodシステムを方法論(Methodology)ということばで整理することにしている。当方法論はその意味での方法論なのである。

方法論の構成要素としては、「思考原理」「(思考原理を実施するための)手順」「(思考原理を実践するためのガイドや)手法」の三者が必要である、と考えている。当方法論は、システム企画の方法論としてはこの三者をそろえている。この条件からすると、問題分析に対しては「思考原理」と「手法」しか提供していないので、当方法論は問題分析の方法論とは言えないことになる。しかし手法を順番に実施すれば問題解決ができるので、実務上の支障があるわけではない。

ところで、方法論とは何なのであろうか。方法論の必要条件を考えてみた。
方法論は作っただけでは駄目で、利用されなければ方法論とは言えない。認知された方法論は、以下の条件を備えているのではないだろうか。
  1. それを使用すると仕事がうまくいく。

  2. ある程度以上の複雑な仕事を対象としている。

  3. 複雑な仕事に対し、単純な原理を提示している。

  4. 単純化した原理を実施するための手順やガイドが提供されている。
方法論の必要条件で当方法論を評価してみると、以下のようになる。